旅のエッセイ presented by Naoyuki Honzawa

初秋の北海道 Vol.3 陸別・阿寒・屈斜路

9月17日午後、美瑛を後にして帯広に向かった。狩勝峠では霧がかかり視界が悪い。慎重に運転していたらいつの間にか峠を越えていた。帯広駅で帰省中の侘美氏と待ち合わせていたのだが、十勝平野をいくら走っても地図上ではちっとも進まない。北海道の地図を見るときは、縮尺に十分注意しなければならないことを実感した。

帯広駅の長崎屋に車を停め、侘美氏に会った。有名なぱんちょうの「豚丼」を食べた。以外にも焼鳥のたれ風の味で、うまかった。長崎屋で今晩の食糧や予備のフィルムを買い、急いで陸別に向かった。すでに日は沈み、さらに雨が降ってきて、悪条件の中、約2時間車を走らせ、陸別・銀河の森コテージにたどり着いた。

共通写真データ:キャノンEOS-1・EF28〜105ミリ・フジクロームプロビア100


月の虹

陸別は、平均気温が日本一低い、「日本一寒い町」だという。一年を通して晴天率が高く、風も少ないことから、天体観測に適しているそうだ。満点の星空を求めてこの「銀河の森コテージ」に来たのだが、あいにくの曇り空のまま。すぐ近くの銀河の森天文台に見学に行った。(見学の様子はVol.7 番外編を参照して下さい)

コテージに戻ってしばらくすると、雲のすき間から月や星がのぞくようになった。近づいている台風の影響で、雲の流れがかなり速い。しばらくすると、月にかさが掛かるようになり、そのかさが2重3重の虹へと変化した。そんな光景を段階露出で何枚も撮ったうちの一枚がこの写真である。

あたりは風で揺れる植物の音、ときどき聞こえる小動物らしい鳴き声の他は、いっさい何も聞こえない。自分の血流の音が聞こえるくらいの「無音」状態だった。


霧のオンネトー

9月18日朝、雨が降っていたので、しばらく静かなコテージでのんびりしてから、阿寒へと向かった。オンネトーへの看板を見付けたのでその通りの道を行くと、地図にある道と違うことが分かった。それでもオンネトーの看板があるので、そのまま行くと、狭いダートになってしまった。少し怖くなりながらダートを登っていくと、突然舗装道路になってオンネトーの沼があらわれた。

オンネトーは五色沼ともいわれ、その美しい湖面が天気や時刻によっていろいろな表情をみせるそうだ。なんとか雨が小降りになり、霧の湖面を撮ってみた。実は2人だけで静けさを味わいながら撮影をしていると、いきなりデカイ観光バスとバスガイドがやってきて、けたたましい笛の音でバス誘導し始めた。あまりのムードぶち壊しに2人はしばらく放心状態になってしまった。そこは観光バスの転回場だったのでしかたがない。


硫黄山の卵

今度は、オンネトーへ正しい入り口らしき広い舗装された道路を降りていき、阿寒湖へ向かった。この日の阿寒湖は、シーズンオフの寂れた観光地的な雰囲気だった。マリモ展示観光センターへの遊覧船も今回はパスした。そのかわり、奈辺久でワカサギ天丼を食べた。あっさりした味付けで見事な味だった。でも丼物は途中であきるね。

「摩周湖第1展望台、濃霧」という電光掲示板の案内を見て、摩周湖は後回し。硫黄山へと車を走らせた。上の写真は、卵売りおじちゃんが仕掛けた、「天然卵蒸し器」である。

その後、摩周湖第3展望台に行ったがやはり霧で、全く見えない。ダメ元で第1展望台へと車を走らせると、何と晴れてきて、湖が見えた、という同行者の声。慌ててスピードアップして到着と同時に三脚とカメラを出して撮影した。しかし、露出を間違えてどれもこれも暗い失敗作になってしまった。(同行者が撮った素晴らしい写真がVol.7 番外編にあります)


屈斜路湖と朝の月

悪天候のせいで、美幌峠からの眺めはあきらめた。屈斜路湖畔のペンションの露天風呂は、うっそうとした森の中に、大きなステンレスの容器のフタを開けて入るという、実にワイルドなものだった。この無防備な姿で、熊が出てきたらいったいどうするんだ、とか考えながら、木漏れ日ならぬ木漏れ星をながめ、翌日の晴天を予感した。

9月19日朝、屈斜路湖沿いを車で走る。この日は台風一過の素晴らしい天気だった。今後の旅程もあるので、美幌峠はあきらめて、屈斜路湖・摩周湖を背にいよいよ太平洋へと車を走らせた。


地平線

330度の地平線が眺められる、という開陽台である。330度というところが控えめでよい。ここで初めて海を見た。さらに国後島がハッキリと見えた。


まっすぐな道路

開陽台を降りてすぐ、このような真っすぐで起伏のある道路が延々と続いていた。ドライブの醍醐味を十分に堪能できた。


空を向いたカーブミラー

T字路に突き当たって左折しようと思ったら、カーブミラーが空を向いていて青かった。これでは何に注意すればいいの? 思わす撮ってしまった。


企画・制作:本澤なおゆき
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