旅行記
危険な街ブタペスト
天国ウイーン
世界で最も美しい街ザルツブルク
ハイデルベルク城での結婚式

 旅行記 by Naoyuki Honzawa

天国ウイーン(1998年4月10日〜12日)


古楽器集庫館のある新王宮の円弧状の美しい廊下

ベートーベン関連スポットよりも、ホイリゲのワイン?


980410 Wed.

 2泊したブダペストのホテルをチェックアウトする。ホテルから東駅まで約300メートル荷物を引きずって歩いた。来た時と同じように、やはり途中で歩道が途切れていて、車道にはみ出して怖い思いをしたが、何とか東駅に着くことができた。なんせここは危険な東駅、気を引き締めて両替に望んだ。何度も闇両替に「Change?」と訊かれる。断固として「No, thank you!」と答える。

 チケットを買ったとき1等車も2等車も同じだ、と言われたが、車両ははっきりと区別されていた。どうしても1等車に乗りたかったので、駅員に訊いてみると、ただ乗っていいと言われ、本当に大丈夫だろうか、罰金を取られたりしないだろうか、などと心配しながら1等車に乗った。しばらくビクビク乗っていたが、ようやく車掌が来たので、事情を話し、追加分をドイツ・マルクで払った。オーストリア・シリングでは足りなかったからだ。お釣りはなぜかハンガリー・フォリントだった。

 国境を越えてオーストリアに入った。さっきの追加分はハンガリー国鉄分だったらしく、オーストリア国内の分の追加金も取られた。ややこしくてなかなか理解できなかったが。

 3〜4時間くらい列車に揺られ、ウイーン中央駅に着いた。実は15分ほど手前のウイーン何タラ駅で降りる人も多くて、戸惑った。そこで降りなくて良かった。前回のヨーロッパ旅行中、マンハイム駅の直前で間違えて降りてしまい、その後の旅行日程が大幅に狂った経験があるのだ。ウイーン駅は近代的で清潔な駅で、歩くのに何の心配もいらなかった。よく案内された看板によって、難なくインフォメーションに入り、3日間交通機関が乗り放題で、美術館などの割引が付くウイーン・カードを購入した。両替をして、その後何度かお世話になるレストラン「Rosen kavarier(バラの騎士)」で食事をした。オープンで安全そうな地下鉄に乗り、ホテル・アナナスにチェックインした。ホテル・アナナスは広くて中庭のあるお洒落なホテルだったが、なぜかラテン系(イタリアかフランス)のツアー客が多くてちょっとオーストリアらしくなかった。


ベートーベンの生家の付近にて

 ホテルで少し休んでから、夕方4時頃、地下鉄でウイーン中心市街ショッテントーア駅へ、郊外にあるハイリゲンシュタットまで市電38に乗った。耳の聞こえなくなったベートーベンが、自分の身の上を悲観して兄弟にあてた「ハイリゲンシュタットの遺書」で有名なこの場所には、田園交響曲の構想を練ったといわれる「ベートーベン夏の家」や、ベートーベン・ハウス、そして美しい小川に沿ったベートーベンの散歩道などベートーベン・スポットだらけなのである。しかし、ベートーベン拝みよりも私達に大切だったのは、ワインであった。この付近には広大なブドウ畑があり、「ホイリゲ」と呼ばれる青空の下で音楽を聞きながら新酒と美味しい肉料理を味わえる天国のような場所がたくさん点在しているのである。すでに5時を過ぎていてベートーベン関連スポットはすべて閉店。記念写真だけであきらめて、店の前で手回しピアノを演奏する民族衣装のおじさんにひかれてさっそくホイリゲに入った。

 まだ日が暮れない時間では賑わいもなかったのが玉にキズだったが、酔ってしまってはそんなの関係ない。割とうすい発泡性の白ワインをビールのように沢山飲みながら、美味しいソーセージやローストポークなどをいっぱい平らげた。天国のようだ。満足して酔っぱらったまま市電に乗り、7時を過ぎていてもまだ明るかったので、ショッテントーア駅から市街を歩くことにした。

 ウイーン市街は、リンクと呼ばれる、もともと城壁だった道にそって様々な建築様式の建物が並んでいる、とても贅沢な建築のギャラリーなのだ。リンクに沿って走る市電1と2に乗ればそれらを眺められる。ウイーン大学、市庁舎(Rathaus、ここにはホイリゲ屋内版ともいえる「ウィーナー・ラートハウスケラー」がある)、ブルク劇場、国会議事堂。国会議事堂の前では、フランクフルトでコンピュータ関係の仕事をしているという中国人観光客と話をした。私達はハンガリーではひどいスリに遭ったばかりであることを話し、彼からはフランクフルトは商業都市だが、ウイーンは観光都市で素晴らしい、ということを聞いた。明るいいい人だった。写真を撮り合った。

 途中から市電に乗り国立オペラ座まで行った。オペラ座では明日ワーグナーの「パルジファル」が上演されることを知る。オペラ座の北の角・アルベルティーナー広場にはおいしそうなソーセージが焼けている屋台がある。メニューがほとんど理解できなかったので、ソーセージを指差して頼んだら丸いパンもくれた。瓶ビールを片手にソーセージを食べる。うまい! 最高! パンもおいしい。ここは明日もう一度私達に利用されることになる。

 日が暮れて薄暗くなる中、オペラ座前で記念写真を撮って、カールスプラッツから地下鉄でホテルへ戻った。スーパーマーケットで買い物をしたかったが、既に夜8時をまわっていたので、イースターエッグとイースターラビットが飾られたショーウィンドーが見れただけで、どの店も開いていなかった。ホテルの部屋に戻ると、既にウイーンに滞在していて、後にハイデルベルクで私達の結婚式に再び合流することになっている兄夫婦からのメッセージが残っていた。さらに明日の夕方には日本から3人の親戚が合流する。兄のホテルに電話をして、明日の夕食は7人でオーストリア料理のパーティーをする約束をした。



モーツァルト像

980411 Thurs.

 立ち見席だったらウイーン国立歌劇場のオペラが見られる、そんな期待を胸に、朝からまずはオペラ座へと足を運んだ。この日に上演される演目は、ワーグナー最後のオペラ「パルジファル」。チケット売り場に行くと、立ち見席のチケットは4時頃から販売されるらしいことが分かり、それより早めに来て並ぶ計画をたてて、まずは市街観光をすることとなった。次の日に親戚3人と共にガイド付きの市内観光を予約していたので、私達がゆっくり見たい観光スポットに絞った。

 街の中心部シュテファンプラッツの近くまで歩き、ドブリンガーという有名な楽譜屋を探した。割と狭いひっそりとした通りにある古い建物だった。日本で買うとべらぼうに高いオーケストラ・スコアなどを物色したが、こちらでもやはり許せないほど高い。古本を少し購入しただけにした。写真が多いオーストリアの音楽観光ガイドの本を見つけて、英語版はないかどうか尋ねたが、写真が全然載っていない別の物ならある、と言われたので、ドイツ語の方を買った。もちろんほとんど読めないのだが、現地語の書物を手に入れるのが好きなのだ。


古楽器集庫館にて 古楽器と私

 新王宮内にある古楽器集庫館を探した。王宮庭園から英雄広場の方まで王宮をひと回りしたが、なかなか入り口が見つからない。しかし、抜けるような青空の下で緑豊かな王宮庭園の散歩は大変心地よかった。王宮庭園には偉そうに椅子にでんと腰掛けたゲーテ像や、ト音記号の花壇の前に立つ若いモーツアルト像などがあって写真に収めた。古楽器集庫館にはほとんど人がいなかった。が、すごい楽器の数。ベートーベン、シューベルトなどが所有していたピアノが収められ、ルネサンス期の古楽器コレクションは世界最高とされているらしい。残念なことに、どれが何の楽器であるかはドイツ語なのでほとんど分からなかった。ゆっくりと贅沢な時間をすごした。古いチェロやヴィオラ・ダ・ガンバの前で記念写真。すごいのは楽器だけでなかった。新王宮の円弧状の天井の高い大きな廊下の美しかったこと。

 新王宮を出て、リンクを渡り、美術史博物館へと歩いた。(続く)

世界で最も美しい街ザルツブルク

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