Column
 コラム

スターバックスとオー・ボン・パン

1999.4.17 本澤なおゆき

 150 Massachusetts Avenue のバークリー音楽大学の向いには「スターバックス・コーヒー」があった。スターバックスは1971年、シアトルのパイク・プレース・マーケットの向いに第1号店が開かれたのがはじまりだった。今や全米はおろか、世界中に店鋪を展開している。東京でもここ数年で、赤坂、六本木、表参道、渋谷、外苑前、銀座など、あちこちでこの店の緑を基調とした看板を見かけるようになった。

 アメリカンコーヒーにヨーロッパの香りとコクを持ち込んで成功したスターバックス。日本ではショート・ドリップ・コーヒーが一杯250円なのが、アメリカでは、一杯$1.25という安さ。講議の合間に、または講義中でさえも手軽にコーヒーの香りを楽しむことができた。多くのアメリカ人は、フタに飲み口の付いた大きな水筒のようなプラスチック製の、またはステンレス製のカップを持参して、通勤途中に立ち寄るスターバックスでコーヒーを注いでもらう、なんて粋な生活をしていたのがうらやましかった。日本のスターバックスでも、紙製のカップに飲み口の開いたフタが付いている。あれが邪魔だからと取らない方がいい。冷めにくいしホコリも入らないのだから。

 日本のスターバックス、なんか高級感を出すためにひとまわり高い値段設定をしていると日経新聞で読んだことがある。ファンとしては、アメリカのようにもうちょっと手軽に飲める値段にして欲しいけどね。そして他のコーヒー店と違ってタバコの煙を気にする必要がない。これが重要なポイントなんだな。

 一緒に楽しめるお菓子は、ブルーベリー、シナモン・カーラント、オレンジ・クランベリーなどのスコーンやマフィン、そしてレモン・パウンドケーキなど。アメリカではどこへ行ってもちょっとコーヒーが飲みたい時は「Can I get a small coffee?」で通用する。ただしスターバックスでは「small coffee」ではなくて「short coffee」と言わなくちゃね。

 ボストンを中心とするニューイングランド地方では、クランベリーも有名だが、なんと言ってもやはりクラムチャウダーである。もっとも手軽にクラムチャウダーが飲めるのが「オー・ボン・パン(Au Bon Pain)」。ボストンのローガン国際空港で飲んだクラムチャウダーは忘れられない。

 留学してから間もなく、ニューヨークへの玄関口サウス・ステーションのオー・ボン・パンで、何か朝飯を食べなければならないことになった。メニューを見上げると何やら、パンの種類や、レタス、トマト、オニオン、アルファルファ、マヨネーズ、マスタードなどの食材の名前らしきものしか並んでなかった。そう、これが初めての「アメリカのサンドウィッチを注文することの難しさ」の洗礼を受けることになった出来事だったのである。早いうちに洗礼を受けた僕は幸せだった。もうサンドウィッチのプロである。

 日本でも最近増えて来たベーグルのサンドウィッチも非常に美味。日干しトマトやガーリックが入ったベーグルを横に輪切りにして、レタス、トマト、マヨネーズ、そしてローストビーフ(または、クリームチーズとスモークサーモンの組み合わせでもいい)をはさんで、コーヒーとともにかじりつく。日本にもそんなサンドウィッチの店ができたらいいな。

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