Column
 コラム

史上最悪のテロによせて

2001.9.16 本澤なおゆき


エンパイア・ステート・ビルディング
からマンハッタン南部の眺望
(1996年5月15日撮影)

左の写真をもとにした
現在の想像図
眺望はがらっと変わる

 信じられない事件がアメリカで起きた。この「対米同時多発テロ事件」の第一報を私が聞いたのは、NYの世界貿易センタービルに航空機が衝突した、というTVのニュース速報だった。これだけでもただ事ではないと思い、「えー?えー?えー?」と声を上げて家族に不審がられた。それなのに、TVが中継映像に変わってから間もなく、リアルタイムでもう一機が突っ込むなんて。目を疑った。この瞬間に、これはただの事故ではないと誰もが思っただろう。ペンタゴンにも飛行機が突っ込み、ついには数十分後に世界貿易センタービルが相次いで倒壊する、というクライマックスに至った。これぐらいでは倒壊することはないだろう、と予想していたのに。

 110階建ての世界貿易センタービルには一度だけ訪れたことがある。ビルの中2階に、ブロードウェイ・ミュージカルの格安チケットが手に入るTKTSがあるからだ。TKTSはタイムズ・スクエアにあるのが有名だが、多分空いているだろうと予想して世界貿易センターの方まで足を運んだのだ。ついでにフードコートで食事をし、外を散歩し、警備員の人に写真を撮ってくれと頼んだが、勤務中だからと断られた。その場所が今はガレキの山なのだ。とうてい信じられない。

 犯行に使われた4機の旅客機のうち2機がボストン発だったのもショックだった。例えばボストンから日本に帰国する場合、直行便がないので普通サンフランシスコやシカゴなどを経由する。今回の事件で犯人は、このような国内の燃料を沢山積んだ長距離路線を選んで犯行に使用したらしい。ボストン留学中によく利用していた西海岸行きのこのような飛行機が狙われたことはショックだ。国際空港であるボストン・ローガン空港において、どうして刃渡り4インチものナイフを持った犯人が、セキュリティを通過できたのか。ローガン空港は全米で唯一、事件から5日経った現在でも閉鎖中らしい。

 また、4機をハイジャックした犯人グループのうち少なくとも7人はパイロットの資格を持っていたそうである。私の兄弟はジャンボ機のパイロットであるが、彼が数年間日本やアメリカで訓練を重ねた上で、ようやく副操縦士になれたというのに、どうして犯人がこのような目的のために、いとも簡単にパイロットの免許を取れたのだろうか。とうてい理解できないことだ。

 アメリカでは報復のための軍事行動の準備を進めているそうである。数千人の犠牲者が見込まれるこの史上まれに見る事件を起こされて、報復するのは当然かも知れないが、地球上の平和な地域の平和がさらに損なわれてしまう事態にならないことを切に願いたいと思う。

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