Column
 コラム

若いジャズのススメ

1999.12.26 本澤なおゆき

 ニューヨーク、そして日本でも東京・大阪・福岡に店を持つ有名なジャズクラブ「ブルーノート」の支配人か誰かが、日本のジャズ・ファンについて、新聞で次のようなことを述べたと人から聞いた。

「日本のジャズ・ファンは比較的古いモノにこだわりがちで、若手のミュージシャンをなかなか認めようとしない傾向がある。若い世代の優れたミュージシャンにもっと耳を傾けるべきである。」

 さらに、作曲家のみつとみ俊郎氏はその著書「音楽ジャンルって何だろう(新潮選書)」のなかで次のように述べている。

「(引用)日本のジャズが、欧米のそれよりも健全な発達を今なお果たしていないの一つの大きな理由に、ジャズが頭でっかちの音楽、つまり、排他的なスノッブな鑑賞法でしか聴かれてこなかったことがあげられると私は思っている。何でもかんでも、ジャズということばでくくってしまえた、いささか乱暴な時代からジャズ全盛期の間に、何か日本のジャズは、えらい勘違いを犯してしまったのではないかと私には思えてならないのである。」

 そう、私も声を大にして言いたい。若いジャズ・ファンたちは、60年代学生運動時代の化石のような年寄りジャズ・ファンの言うことに耳を傾けることなく、遠慮をせずに分け隔てなく若いミュージシャンを聴くべきなのだ。邪道と言われようが気にしないで。もうマイルス・デイビスやジョン・コルトレーンやバド・パウエルやアート・ブレイキー・アンド・ジャズメッセンジャーズの時代ではない。ダニーロ・ペレツ、クリスチャン・マクブライド、ケニー・ギャレット、ジョイ・カルデラッツォ、スティーヴン・スコット、ジャッキー・テラソン、アヴィシャイ・コーエン、そしてトール・ドドなんかを聴いてごらん(なぜかピアニストが多かった)。若手がこんなに真摯な態度で新しいジャズに取り組んでいるかが良く分かるだろう。

 若手ベーシスト、クリスチャン・マクブライドの「Number Two Express」というアルバムでは、アコースティック・ベースの開放弦の4つの音を下から順に鳴らしただけの斬新なリフで「EGAD」という曲を聴かせている。なんて素晴らしい思いつきなんだろう。チック・コリア・アンド・オリジンの新しいアルバム「change」では、若手ベーシストのアヴィシャイ・コーエンのプレイも素晴らしいが、チック自身すっかり人間味あふれる気持ちいいプレイを見せていて、マリンバにまでトライしているお茶目なところをすっかり見直したりしました。パット・メセニーも「イマジナリー・デイ」において相変わらず素晴らしい音楽を聴かせてくれるなあ。

 それよりもトール・ドドのCD(ディスクユニオンより発売中)を一度聴いてほしい。日本の若いジャズ・ファンが彼を認めなかったら、もう日本のジャズに健全な将来は考えられないと思う。

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