コラム


満員電車にはうんざりだ!

1998.11.14 

 私は毎朝夕、某私鉄に1時間ゆられなければならない。最近になってようやく通勤電車で損をしないためのコツをつかんだ気がする。途中の駅で降りると思われる人の席の前に立ちはだかるあれである。毎日同じ車両にほぼ同じ人が乗るのだったら、神経衰弱をやるかのように早く降りる人をおぼえてしまえばいいだろうが、実際はそうはいかない。私の乗る時間帯はたまたま高校生の通学時間と重なる。そこで、できるだけ高校生の前に立つ。周りを見回すと他の人もやはり高校生の前に立っていて、皆考えることが同じである。

 気になるのは、肘や肩が不意にぶつかったりしても謝らない人が多いことである。私の偏見では、「背が高めの横柄そうな男性」「おやじ」「三角形型に膨らんだバックと紙袋を重ねて肘に掛けていて、ガサガサいわせているおばさん」などにその多くが存在するようだ。これが例えばアメリカだと、少しでもぶつかると「Excuse me.」となる。日本では、電車の席に肩や腕がべったり触れるほどにつめて座らなければならなかったり、満員になるといやでも他人と体を密着させなければならない。これは欧米の人には全く似合わないではないか! 

 欧米の人は、親しくない人に断りもなく触れることは失礼にあたる、と教育されているのか。あるいは、本来欧米は鉄道のファーストクラス、セカンドクラスに象徴されるように階級社会であり、親しくない人に触れるということは、スリや盗難の危険があるなどという、差別的発想によるものだったかもしれない。そう考えると、そのような差別的発想の生まれにくい日本というのは、いい部分を残しているのかも知れない、なんて思ったりもする。しかし満員電車はいやだ。

 差別的発想といえば、カリフォルニア州オークランドで電車に乗るときに、私はホームで普通に待っていて普通に乗り込もうとしただけなのに、若いビジネスマン風の男にリュックを引っ張られ、「私はこの女性が先に乗るべきだと思う。」などと強い調子で咎めてきたことがあった。それでその女性が救われたかどうかは別として、これは、ホームに見慣れない変な東洋人がいるから、何か少しでも気に入らない行動をしたら一言いってやろう、というあら探し的な思考の結果なのだろう。だいたい、レディ・ファーストなどという騎士道的発想はいまどき古いというのを聞いたことがある。いま行われるべきものは、Nonsexist Chivalry、つまり男女平等の騎士道。もし女性が先にドアの前に来たら、女性がドアを開ける。その逆もまた然り....。

 このような経験をしたのは2年間の留学中たった一回である。実はアメリカでは東洋人に対する差別を意識したことがほとんどないのだ。ヨーロッパでは何度か嫌な経験をしたが、アメリカはその点いい国だなあ、と思うのだ。


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