バークリー留学記
1995夏編
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FAQ

 バークリー留学記  by Naoyuki Honzawa

1996夏編

チャールズ河よりボストンを眺める
タワーの上から見たナイアガラ滝


960531 Fri

 夏セメスタはパートタイムで3つしか授業を取っていない。金曜日は休みなので、暇つぶしにHとボストン美術館に行った。現代アートを見て、Hにジョアン・ミロの絵を薦められて画集を買った。アメリカの女流画家ジョージア・オキーフを薦めて、彼女は女性ならではの観点で花を必要以上にクローズアップして描き、まるで女性性器のようなエロティックな印象さえ与える画家なのだ、と能書きこいたら、彼はすっかり感動していた。Hは昔画家になりたかったのだそうだ。パウル・クレーの「ワイルド・フラワー」のポスターを購入。

 その後1年振りに服を買いに行き、そのまま散髪8.95ドルの安さのスーパーカッツで、ルームメイトとバリカンで切りあって以来伸び放題だった髪をそろえた。


960606

 映画「ナチュラルボーン・キラーズ」を見る。強烈な性格の持ち主であるカップルが車に乗りながら無差別に次々と人を殺していくお話。結局捕まるのだが、マスコミでヒーロー扱いされ、TV特別番組のインタビューを受けている途中に再び暴れ出し、脱獄する。はっきり言って納得行かないストーリーだが、映像が非現実的でシュールレアリズムの詩とか絵画とかに通じるものがあり、新鮮だった。しかしこの映画は、最近スコットランドやタスマニアで起きた銃の乱射事件の犯人に影響を与えた可能性があるらしいからコワイ。


960608

 地下鉄Tに乗って郊外の緑豊かな公園で2時間くらいテニスを楽しんだ。そして夜は初めてボストン・ポップスを聴いた。「大学祝典序曲」、「ダッタン人の踊り」、「アイーダの行進曲」、「トランペット吹きの休日」、「タイプライター」などと、J. ウィリアムズの「シンドラーのリストのテーマ」、「ジュラシックパークのテーマ」、そして「スーパーマンのテーマ」など、誰もがどこかで聴いたことがあるような曲ばかり。「ボギー大佐」では観客全員で口笛の合唱をした。3部構成で指揮者の司会付き。オーケストラ席はウェイターサービス付き。私達はバルコニー席なのでなし。アンコールの「星条旗よ永遠なれ」では、天井からアメリカ国旗がいきなりぶら下がった。老若男女誰もが楽しめるコンサートでした。


960610

 鼻炎に悩まされている。耳鼻科の英訳は、適当に言っていたのが正しく、ear, nose and throat、略してENT Specialist(エント)と呼ぶらしい。何でも訳してみるもんだ。

 ワシントンDCのスミソニアン博物館で買った「惑星」という本を全部読み終えた。惑星の発見の歴史について、コペルニクス、チコ・ブラーエ、ケプラー、ガリレオ、そしてニュートンという流れが、J.S.バッハの生まれる前にほぼ完成していたことには驚いた。古代ギリシャの人達はもっとクリエイティブだった。天文学の諸理論がこんなに早くから完成されていたと思うと同時に、西洋音楽というのは実に新しい、音楽のほんの一派にすぎない、という変な点を実感したのがこの本だった。


960617

 ブレッドアンドサーカスというスーパーに買い物に行く。茄子を買った。「この茄子はイタリアンかジャパニーズか?」と訊かれ、「イタリアンだ。」と答える。このスーパーではジャパニーズ茄子は薄紫色で細いが、日本にはそんな茄子はない。イタリアンは太くてあくが強い。日本のような茄子焼きは出来ないだろう。レジのおネエさんに「See you later!」と言われた。感じのいい人だった。日曜の午後で暇だったんだろうか。


960621

 夏至だ。ここ23日ボストンは梅雨のような天気で涼しい。リチャード・ストルツマン(Clarinet)の息子のピーターがなんとバークリーでピアノを習っていて、あるフランス人テナーサックスとのデュオを聴いた。ピーターはさすがに息子だけあって上手かった。ブルージーではないが。風貌は結構違う。息子は結構モテて女を泣かせているという話を聞く。


960623

 昨夜は毎週恒例のジャムセッション、滅茶苦茶だったが楽しかった。その後かるく酒を飲み、なぜか家族の話になって、私の真面目なところは父ゆずりだと改めて気付かされた。

 チョン・ミュンフン指揮の3枚のメシアンのCDを聴いた。かなり気に入っている。ライナーにメシアン自身の説明とサインが付いているくらいの作曲家のお札付きなのだ。トゥーランガリラ交響曲の最後の音は、なんと17秒も伸ばしてクレシェンドしている。(サイモン・ラトル盤はたったの7秒。)聴いてて息が止まるかと思った。


960625

 ジャズ作曲のプロジェクトの録音のための演奏者手配に苦労している。今日やっと全員集めることが出来た。プロジェクトの曲名は「コンポジション・ウィズ・ブルー」。ここ23日は写譜に費やされそうだ。アンサンブルのクラスの録音を聴きながら寝ようとすると、寝付けなくなる。自分の演奏は寝る前に聴くもんじゃないな。でも、先生やクラスメートに「Sounds nice!!」と言われたり、友人に「本澤さんは叩けるんだからもっとセッションに参加した方がいいよ。」と言われるところをみると、自分が思っているより上達しているんだな、と思う。そろそろ自身を持つべきか。いや。


960630

 夕方6時から自作「コンポジション・ウィズ・ブルー」の録音会を行った。結局7分位かかる曲になって、時間内に4テイク撮った。テナーのOやルームメイトのDに助けられてうまくいった。私のソロも30秒くらい入っているのだが、前後の彼らのソロにはかなわない。特にDはとても美しいソロを取っていた。尊敬。


960702

 ルームメイトのDの初リサイタルがあった。ピアノトリオで、大変緊張感がある文句なしのコンサートだった。これでDも注目の的となるだろう。実は彼はすごいピアニストなのだ。とたまには褒めてみる。


960704

 2度目の独立記念日は雨だった。1時間後の花火は無事上がるだろうか。多くのアメリカ人がお祭り騒ぎの今日、私は家でゆっくりすることに決めた。去年は寮の仲間と昼からチャールズ川を陣取ってのんびりした。花火に関しては日本の方がはるかに繊細で美しい。

 昨日はアパートでパーティーをした。私がSさんにアップルパイの作り方を教えて欲しいと言ったのが発端だ。夕方5時から、ビールを飲みながらカレーとマーボナス(すごい組み合わせだ。)を作って、その後アップルパイを教わった。既製のパイ生地にカスタードクリームとゆでた林檎を載せるもの。クリームがうまく固まらず、盛るときにぐちゃぐちゃになったのが23切れあった。冷えてから盛れば良かったようだ。朝4時まで飲んで騒いだ。


コープリー広場のトリニティー教会
自由の女神の後ろ姿 右足がかわいい

960711

 ニューヨークで日本から来た家族と合流した。作家がよく泊まるというアルゴンキンというシックなホテルに泊まる。汽車でゆっくり行くはずが、気が変わって飛行機を使った。料金は3倍だが、時間は1/4位だ。早く着いてしまったが、彼らは着いてすぐに自由の女神を見に行ったらしく、結局予定通り夕方にあうことになった。その間、私はリンカーンセンターの催し物をチェックして、サンドウィッチとコーヒーを飲んでいた。エイヴリー・フィッシャー・ホールでは、トーキョー・ストリング・カルテットとリチャード・ストルツマンがモーツァルトのクラリネット五重奏曲をやっていた。


960712

 ブロードウェイミュージカル「スモーキージョーズカフェ」を見た。初めて見たミュージカルで、「スタンド・バイ・ミー」「スパニッシュ・ハーレム」などの名曲に合わせて、歌って踊っての2時間。大人向けで、本格的なゴスペルのような声量たっぷりの歌声に感動した。明日はマチネで有名な「キャッツ」を見る予定。


960714

 家族とナイアガラの滝に来た。早朝にニューヨークを出てバッファローに到着、そこですごく良心的な観光タクシーを200ドルで借りきって、アメリカ側だけ案内してもらった。というのは、アメリカ側を十分案内した後カナダ側に送ってくれて、夕方6時に待ち合わせたのだが、そのとき前金も一切取らなかったのである。私はこの仕事を趣味でやっているんだ、とは言っていたが、私達が約束を破ればタダで観光できた訳で、その信頼の深さに私達は感動した。

 メインエベントの「霧の乙女号」は、やはり一番すごかった。3つのナイアガラ滝の中で最も大きいホースシュー滝の水しぶきの中に船ごと入ってしまうものだ。もちろんビニルの合羽が配られる。ナイアガラに来ると人間が大きくなると聞いていたが、本当に大きくなった様な気がする。洞窟の中から滝の内側に入る所にも行ったが、これは大したことなかった。もちろん同様のアトラクションがいくつかあるので、選んでいった方が良かったのかも知れない。

 アメリカ側ではタクシーの運転手に連れられて、滝に落ちる前の水に触った。普通のキャンプ場に流れる川の水となんら変わりはないのだが、これから数分後に轟音としぶきをたてて落ちる水なのだ。なかなか出来ない経験だ。彼は上流のカナダ側のし尿処理場に向かって、「カナダー!」と怒ってみせた。アメリカとカナダも国境ではそれなりに仲が悪いようだ。

 この日のうちに今度はボストンに戻り、今度は私がボストンを案内する予定だ。


960816

 全ての試験が終わって夏セメスタも終わった。クラシック音楽の分析の授業での、最後の英語での発表が一番大変だったが、先生にも仲間にも「Good job!!」と言われて嬉しかった。アンサンブルのレベルも上がった。断念したジャズ作曲の授業の先生から手紙が来て、来セメスタの始めにプロジェクトを完成させれば、F(不可)を取り消してくれる、との配慮に感動した。

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